「富士山が見える!私、富士山が大好き。見ているとパワーをもらえる気がするの。
もう少しがんばれそうな気がするわ」
“膵臓がん多発肝移転”で、余命宣告を受けているSさまは、舞浜倶楽部にご主人とともにご入居されてから、余命を享受しながらも、希望を持って日々を送ってくださっていました。音楽がお好きで、ブンネ楽器の演奏を楽しまれ、富士山が見える窓辺にお連れすると、いつもうれしそうに眺めていらっしゃいました。
そんなSさまが、ターミナル期を迎えられたのは2月のことでした。
Sさまの担当ケアチームは、人生の最期をどのように過ごすか、人生をどう生き抜くか、どのように逝きたいかをSさまと共に考えました。
腹水がたまり、体が重く、身の置き場のないご様子のSさまに、手のタクティールケアを施すと安心され、背中を強めに押してさしあげると、苦痛の軽減が見られました。また、お好きなものを食べていただこうと、「Sさまダイアリー」を作り、食べたいもの、食べられたものを毎日記録して、チームで共有しました。「食べることは、生きること」、できるかぎりご自分で食べていただこうと、食事サービス課も、Sさまダイアリーに沿って、旬の果物を用意したり、お気に入りの海苔巻きを作ったりして、Sさまに味わう喜びを感じていただけるよう努力し、最期には、大好きなイチゴのしぼり汁を、味わっていただくことができました。
尊厳を保つ排泄ケアのため、「ご自分の力でトイレに行きたい」という強いお気持ちを尊重し続け、腹水による排尿困難や痛みが見られてからは、留置カテーテルにより、排尿の苦痛を緩和しました。
そして、看取りのとき。
ブンネ楽器で、Sさまの大好きな曲「夜霧よ今夜もありがとう」を奏で、ご家族と共に歌いました。すると、喘ぐような呼吸が落ち着き、口から流れる血も軽減、穏やかな表情になられました。
息子さまが「母さんの好きな歌聞こえているんだね」とおっしゃり、繰り返し「夜霧よ今夜もありがとう」をいっしょに歌ったことは、ご家族と心をひとつにした看取りになったと感じています。
Sさまのターミナルケアを通じ、スタッフは、思い出・感動・ご家族の愛という、たくさんの「贈り物」をSさまからいただくことができました。この贈り物を大切にして、これからも「天国へ向かう最善の看取り」ができるホームを目指して行きたいと思っています。